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第62回日本肝癌研究会

会長挨拶

第62回日本肝癌研究会
会長 黒崎雅之(武蔵野赤十字病院 院長)

テーマ 「潮流を見極める」

 このたび第62回日本肝癌研究会の会長を拝命しました。会期は2026年7月17日(金)-18日(土)、会場は虎ノ門ヒルズフォーラムです。伝統ある本研究会を主催させていただくことを光栄に存じます。多くの会員の皆様が会場にお越しいただけることを願い、医局員一同で力を合わせて鋭意準備を進めております。
 日本肝癌研究会の重要な事業である全国原発性肝癌追跡調査の最新版(第 23 回)では、肝細胞癌の生存中央値は5.6年、5年生存率は53.6%となりました。この誇るべきNational dataは、肝細胞癌の予後が刻々と向上していることを示しています。これは、本研究会が精力的に取り組んできた肝癌の生物学、診断、治療に関する研究の積み重ね、特に本研究会の特徴である丹念な症例検討、内科、外科、病理、放射線科の垣根を超えた熱い議論の成果と思います。
 しかし肝癌をめぐる課題は山積しています。抗ウイルス治療の効果が向上したことにより、発がんリスク症例は従来のウイルス性肝炎から、ウイルス排除後・制御下、あるいはアルコール関連肝疾患やMASLDなど非ウイルス性肝疾患にシフトしています。ウイルス性のみならず非ウイルス性肝疾患に対する治療介入、背景肝疾患ごとに個別化した発がん高リスク群の囲い込み、サーベイランス方法の確立が重要な課題です。近年増加している非定型的画像所見を呈する肝腫瘍の診断、特に病理診断の価値の再評価も重要なテーマです。全身薬物療法の継続的な進歩、特に複合免疫療法の登場は、間違いなく肝癌症例の予後を延長すると期待していますが、臨床試験とは背景が異なるReal worldにおいて、安全性と有効性の検証が必要です。加えて、ゲノム異常や免疫学的微小環境なども含んだバイオマーカーの確立が切実に求められます。効果の高い薬物療法の登場を背景として、肝細胞癌の腫瘍学的切除可能性分類が提唱され、この新基準を軸として肝切除・局所療法・薬物療法・放射線治療の選択基準の再考が進むと期待されます。薬物療法と局所療法・放射線治療の逐次的併用、薬物療法後のconversion基準など、集学的検討を要する多くの臨床的課題があります。肝がんの予後が向上するに従い、治療を支える肝機能の保持はますます重要な意味を持ちます。
 このように刻々と変化する課題に対して取り組む場になることを祈念して、本会のテーマを「潮流を見極める」としました。肝癌診療にかかわる各診療科において、病態解析、診断、治療における最新のトレンド「潮流」を見極めて、新たな視点で基礎研究・診療・臨床研究が活性化することが、新たな治療コンセプトを創設することにつながり、それが肝癌の治療成績のさらなる飛躍的向上に寄与すると確信しています。
 本会を最新の「潮流を見極める」ための機会、そして診療科を越えた熱い議論を交わし、若手も活躍できる会にしたいと思います。多くの方々のご参加を心よりお待ちしています。

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